「売れない理由」をデータで可視化する――印刷会社の営業戦略再構築法
感覚に頼った営業から脱却し、根拠に基づく販売戦略を立てるための手法を印刷会社様向けに具体的にご紹介します。売れない理由をデータで可視化し、価格設定や商品ライン、営業プロセスの課題を明確にする実践ステップを順を追って解説します。
元印刷会社として経営改善を実現してきた当社JOTOが、転換期や新規開拓に悩む印刷会社に向け、分析の初動からBI導入、現場運用までのロードマップを提案・伴走します。続きを読み進めて、まず何から着手すべきかを見つけてください。
CONTENTS
1. 「売れない理由」をデータで可視化して印刷会社の営業戦略を再構築する方法

印刷会社が抱える経営課題をデータで可視化し、営業とマーケティングを連動させて改善に結びつける実務的な手順とロードマップを示します。印刷会社の多くは営業活動が属人的になり、売れない理由が曖昧なまま改善が進みません。データで可視化することで課題を明確化し、経営判断と現場改善を速やかに実行できます。
「なぜ売れないのか」「どこを改善すれば効果が出るのか」。本節では、印刷業の現場でよく抱かれる疑問に対して、データ収集と可視化を通じてどのように答えを導き出せるかを示します。
1-1. 可視化で得られる効果
可視化は単なるグラフ化ではなく、営業と生産、経理が共通の事実を見て対策を取れるようにすることです。具体的には受注構造の偏り、原価吸収率、顧客別の利益率などが一目で把握できるようになります。
- 受注傾向の把握により価格競争の無意味な応酬を減らせます。
- 顧客別の貢献度で重点顧客にリソースを配分できます。
- 生産と営業のボトルネックが可視化され、残業やムダを削減できます。
1-2. 必要なデータ一覧
営業戦略を再構築するために最低限必要なデータ項目とその取得ポイントを整理します。ここで示すデータは印刷業の経営課題を洗い出し、改善策の優先順位付けに直結します。
| データ項目 | 取得元 | 目的 |
|---|---|---|
| 受注履歴(商品別・顧客別) | 見積・受注システム | 売上構造と頻度分析 |
| 原価・実行予算 | 生産管理・会計 | 商品別利益率算出 |
| 顧客属性(業種、規模) | CRM/名刺情報 | ターゲット分析 |
1-3. 分析で見るべき指標
売れない理由を突き止めるにはKPIを明確にすることが不可欠です。売上や受注数だけでなく、見積転換率、粗利率、再受注率、案件の滞留日数などを組み合わせて評価します。
1-4. 初動でできる改善施策
可視化から得た仮説に対して、早期に効果を出すための施策を実行します。短期施策と中期施策を分けて設定し、営業のトークや見積テンプレート、クロスセルの仕組みを整えます。
- 見積テンプレートの標準化で受注転換率を改善する。
- 顧客ランク別の営業アプローチを設計して効率的にリソース配分する。
- 製造側と営業側のSLAを設定して納期遅延や手戻りを減らす。
2. データで明らかになる売れない原因

データ分析は価格だけに原因を求めず、商品設計や営業プロセス、顧客ニーズのミスマッチなど多面的に売れない理由を明らかにします。印刷業の特性を踏まえて経営的な視点から改善ポイントを抽出します。
2-1. 価格の見直しポイント
価格は重要な要素ですが、それだけで解決することは稀です。データからは値上げ余地、値下げによる収益悪化リスク、顧客ごとの価格感応度を把握できます。
- 製品別の粗利分布を分析して価格改定の優先順を決める。
- 顧客ごとの価格感応度で提案パッケージを差別化する。
- 紙やインクのコスト変動を価格転嫁する際の説明資料を準備する。
2-2. 商品ラインの課題
印刷物はオーダーメードで多品種少量になりがちです。データで収益性の低い商品群や非効率な工程を特定し、商品ラインの絞り込みや付加価値商品の設計に繋げます。
| 項目 | 見るべき指標 |
|---|---|
| 多品種少量の製品 | 工程別作業時間・稼働率 |
| 販促物(チラシ等) | キャンペーンごとの効果とROI |
| 伝票・業務帳票 | 顧客の業務効率改善提案余地 |
2-3. 営業プロセスの課題
営業は受注だけでなく顧客の業務課題を引き出す役割に変わる必要があります。データで商談の滞留パターン、失注理由、見積から受注までの期間を分析すると具体的な改善点が見えてきます。
3. 印刷会社向けデータ収集手順

現場で実行可能なデータ収集の順序と運用方法を示します。印刷会社の限られたリソースでも継続可能な形でデータを蓄積し、経営改善に結びつける手順です。
3-1. 現状分析の進め方
現状分析はトップダウンとボトムアップの両方で行います。経営者の視点で見たい指標と現場が示す実務データを突き合わせて課題の優先順位を定めます。
- まずは売上構造と粗利構造を月次で整理する。
- 次に顧客別の利益貢献度と頻度を突合する。
- 最後に生産側データと営業データの突合でボトルネックを特定する。
3-2. 顧客情報の整備
顧客情報は営業改善とマーケティング施策の基盤です。氏名や連絡先だけでなく業種、購買行動、過去のキャンペーン反応などを構造化して管理します。
| 項目 | 整備目的 |
|---|---|
| 業種・規模 | ターゲティングの精度向上 |
| 購買履歴 | リピート推進とLTVの算出 |
| 担当者情報 | コミュニケーションの継続性確保 |
3-3. 案件管理の見直し
案件管理は受注率向上と見積工数削減に直結します。案件ごとに状態を定義し、滞留原因や受注転換の阻害要因をデータで追跡できる仕組みをつくります。
- 案件ステータスを細かく定義して滞留を可視化する。
- 失注理由を定型化して対策メニュー化する。
- 見積から受注までの平均日数をKPI化する。
4. 現場で使える可視化の作り方

現場で使い続けられる可視化はシンプルで定期的に更新可能なことが重要です。BIやダッシュボードの導入から運用までのポイントを実務目線で解説します。
4-1. BI導入基準
BI導入は高機能だけでなく、現場が使いこなせることが最優先です。導入前にデータ品質、更新頻度、ユーザーの操作性を評価し、段階的に導入する計画を立てます。
- 最低限のデータ項目でPoCを回して現場の受け入れを確認する。
- サポート可能な管理体制をあらかじめ決める。
- 必要に応じて外部専門家や中小企業診断士の支援を活用する。
4-2. ダッシュボード設計
ダッシュボードは経営判断用と現場運用用で分けるのが成功のコツです。経営層はKPIと傾向を、営業現場は案件ごとの行動指示を中心に設計します。
| 用途 | 主要項目 |
|---|---|
| 経営判断 | 売上・粗利・主要顧客の貢献度 |
| 営業現場 | 案件ステータス・見積残件・優先顧客リスト |
| 生産管理 | 稼働率・工程遅延・コスト要因 |
4-3. 運用ルールの設定
可視化を継続するには運用ルールの明確化が不可欠です。データ入力の責任者、更新頻度、レビュー会議のスケジュールを決めて習慣化します。
- データ入力の担当を明確にし、ミス防止のチェックリストを設ける。
- 週次での営業レビューと月次での経営レビューを定例化する。
- 改善アクションの優先順位と担当をダッシュボードで紐付ける。
5. 営業戦略再構築の実行ロードマップ

営業戦略再構築のロードマップは、短期で成果を出す施策と中長期で体質改善する施策を組み合わせます。まず可視化による現状把握を行い、次に優先課題を定めて実行と検証を繰り返すサイクルを回します。現場に根ざした改善を伴走型で支援し、印刷会社の経営改善と新規事業の検討を並行して進めることが重要です。
まとめ
本記事では、印刷会社が直面する経営課題をデータ可視化により明確化し、売上不振の原因に応じた価格改定や商品ラインの整理、営業プロセスの改善手順を紹介しました。
さらに、必要なデータ整備や案件管理の見直し、BI導入の基準、ダッシュボード設計、運用ルールを含む実行ロードマップも提示しています。
印刷業の転換期にある企業向けに営業改善や新規顧客開拓を伴走支援するJOTOの提案はhttps://print.jotoinsatsu.co.jpで確認できます。
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